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熊本地方裁判所 平成9年(ワ)919号 判決 2000年1月20日

原告

合志工業団地協同組合

右代表者代表理事

吉弘淳太郎

右訴訟代理人弁護士

松野信夫

右同

山長浩徳

被告

右代表者法務大臣

臼井日出男

右指定代理人

吉田耕一

右同

矢野辰善

右同

増住香織

右同

浦本進

右同

堀田誠

右同

古閑誠也

右同

渡邉直美

参加人

熊本県知事 福島譲二

右指定代理人

西山一郎

右同

丸山秀人

右同

江崎勉

右同

小山良一

右同

鈴和幸

右両名指定代理人

細川二朗

右同

吉田光宏

右同

金子智美

右同

木村淳一

右同

白浜雅春

右同

境野義孝

主文

一  被告は、原告に対し、別紙物件目録記載の土地について熊本地方法務局合志出張所平成六年八月八日受付第六七九一号の所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第三 当裁判所の判断

一  本件土地が、本件変更許可において、新設公共施設用地に含まれるものとして扱われていたのか(争点1)について

1  原告は、本件土地が、本件変更同意においては新設公共施設用地に含まれるものとして扱われていたが、本件変更許可においては新設公共施設用地に含まれるものとして扱われなかった経緯について、<1>従来、法三三条一項一〇号、同法施行令二八条の三に基づく一〇メートルの緩衝帯の設置に関し、街路であればその幅員の二分の一を緩衝帯として算入することが許されていた、<2>ところが、本件変更許可申請のころ、熊本県の取扱いが変更され、熊本県の担当者から、植樹された街路でなければ右算入を許さないとの行政指導を受けた、<3>そのため、いくつかの箇所について申請内容を見直したが、本件土地付近もその一つであり、本件変更許可申情の受理前の段階において、右のような行政指導を受けたことから、一〇メートルの緩衝帯を確保するために、本件土地とほぼ一致する道路4を緑地として扱い、かつ、その西側に緑地6を新たに設けることになったと説明している。

この点について、原告から依頼を受けて本件変更許可申請手続等を担当した証人金澤親史は、右説明に沿う証言をし、また、陳述書等(〔証拠略〕)を作成しているところ、右証言及び陳述書は、不明確な部分もないではないが、大筋においては合理的な内容で関係証拠ともよく符合しており、原告の右説明は一応納得できるものであって、原告の説明するような事実経過であった可能性を否定することはできない。

2  これに対し、被告は、本件変更許可書の添付書類である求積図(〔証拠略〕)や土地利用計画平面図(〔証拠略〕)において、本件土地付近が道路と表示されていることなどを指摘するが(被告主張<2>、<3>)、道路あるいは道との表示が直ちに新設公共施設用地に該当することを意味するとまではいえず(現に、新設公共施設用地に該当しないことが明らかな部分が、右求積図において、「道―2―2」と表示されている。)、右の求積図や土地利用計画平面図については、本件変更同意段階のものをそのまま踏襲したにすぎないとも考えられるから、これらの記載によっても、本件土地が本件変更許可において新設公共施設用地として扱われていたことを認めるには足りない。

また、被告は、工事完了届書(〔証拠略〕)に添付された土地利用平面図(〔証拠略〕)、及び合志工業団地緑化計画図(〔証拠略〕)、法四六条に基づく開発登録簿に添付されている土地利用計画平面図(〔証拠略〕)において、本件土地が緑地ではなく、道路として表示されていることを指摘するが(被告主張<4>ないし<6>)、これらは、いずれも、本件変更許可後に作成されたものであって、本件変更許可の内容そのものを記載したものではなく、また、本件変更同意における土地利用計画平面図である乙二の7及び本件変更許可における前記乙七の10の土地利用計画平面図を踏襲したにすぎないものとも考えられるから、これらの記載によっても、本件土地が本件変更許可において新設公共施設用地として扱われていたことを認めるには足りない。

また、被告は、本件土地の少なくとも一部が緑地となっていないことなどを指摘するが(被告主張<7>)、仮にそうであるとしても、そのことから直ちに本件土地が本件変更許可において新設公共施設用地として扱われていたといい切ることはできない上、甲六の写真<4>ないし<7>等に照らすと、本件の開発行為に関する工事完了時において、本件土地の大部分が道路であったともにわかには認め難い。

さらに、被告は、原告が本件登記手続に承諾していたことや、原告が、参加人に対し、本件土地を含む一一筆の土地につき、貸付対象施設譲渡承認申請書を提出していることなどを指摘するが(被告主張<8>、<9>)、右1で検討したところを前提とすると、本件変更許可後の一連の手続が、本件変更同意段階の書類に基づいてなされたことから、誤って本件土地が新設公共施設用地として扱われ、原告もこのことに気付かないで、本件登記手続に承諾するなどした可能性が否定できないから、これらの点も、本件土地が、本件変更許可において、新設公共施設用地として扱われたことを示す決め手とはならない。

3  本件土地が、本件変更許可において、新設公共施設用地に含まれるものとして扱われていたのかどうかについて、本件変更許可書(〔証拠略〕)自体には、新設公共施設用地に関する記載がないことから、右許可書の添付書類によりこれを判断すべきところ、右添付書類のうち、設計説明書(〔証拠略〕)、新設する公共施設の一覧表(変更)(〔証拠略〕)及び公共施設新旧対照図(〔証拠略〕)の記載状況は前記第二の二7のとおりであって、これによれば、本件変更許可の段階では、本件土地の部分は新設公共施設である道路から除外されたものとみるほかないところ、被告の説明では、右設計説明書(〔証拠略〕)の公共施設用地欄に赤字で九七一三・二四平方メートルと記載されていること、新設する公共施設の一覧表(変更)(〔証拠略〕)から本件土地部分に当たる道路4の記載がなくなっていること、公共施設新旧対照図(〔証拠略〕)では本件土地部分に当たる<4>部分が新設する道路として色分けされていないことに対する合理的な説明をすることができないのに対し、原告の説明は、右各書証の記載内容等と符合するものであり、また、被告が原告の説明と矛盾するものとして挙げる被告の主張<1>ないし<9>に掲記の各書証や事情についても、右2のとおり、原告の説明を前提としても存在しうる余地があるのであるから、結局、本件土地は、本件変更許可において新設公共施設用地に含まれるものとして扱われていたと認めることはできない。

4  他に、本件土地が、本件変更許可において、新設公共施設用地として扱われたことを認めるに足りる証拠はなく、被告の主張は理由がない。

二  よって、その余の点を判断するまでもなく、原告の請求には理由があるからこれを認容することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 杉山正士 裁判官 伊藤正晴 渡部市郎)

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